コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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「つみきのいえ」でわかったアカデミー賞の実力

加藤久仁生監督「つみきのいえ」を鑑賞。
ご存じ第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した作品です。

友だちの部長のおかげで、他の短編アニメーション候補作品もいっしょに観る機会に恵まれたんですよ。

それでさっそく観てみたら、たいした、たまげた、驚いた。
すばらしい!
比べてみると、イッパツでわかるね。
これはアカデミー賞を獲って当然だー!

いやね、他の候補もよくできてはいるんですよ。
たとえばディズニーの「PRESTO」はマジシャンとウサギのコメディで、どたばたモノ。
アメリカでは「WALLE.E」の上映前に流していたから、けっこうみんな劇場で目にしたことがあるんじゃないかな。

内容は昔ながらのカトゥーンという感じで、おもしろいんだけど、完璧に商業作品だよね。実験性がない。

それから「This way up」というのは葬儀屋が棺桶をかついでいくうちに、あれこれと事件が起こるというブラック・コメディ。
棺桶を運んでいるはずが、自分のほうが地獄にいっちゃったりして、さあ、たいへん。
これまたよくできているけど、ティム・バートンを彷彿とさせてしまうところが惜しいんだよね。

わたしの当初の予想では、ディズニーが大々的に押していた「PRESTO」が獲るだろうと賭けていたんですよ。
ところが結果はあっと驚く「つみきのいえ」の勝利。

それで実際に観てみると、その理由がわかりますね。
だって芸術作品になっているんだもの。

水没した町で、つみきを積んだような家に住んでいる、ひとりの老人。
水位が増すたびに家を上へ上へと積みあげて暮らす日々。

ある日水のなかにパイプを落とした老人は、海のなかにダイビングして探しにいく。
そして水のなかに沈んだ部屋に潜っていくうちに、いまはなき妻や家族たちと過ごした思い出がよみがえってくる……。

なにより目を奪われるのは、そのパステル画のような美しい色彩。
時に陰影を濃くして深みがあり、時にエッチングのような繊細さがあり、まるで画集のような完成度。

ふつうのアニメとはまったく画の質が違っていて、奥行きがあるんですよ。
あの色彩の透明感やタッチの温かみがどうやって生まれるのか、ただもう驚くばかりです。

そして老人が追憶をたどっていくようすが、またせつない。
失われた過去。
なくしたひとたち、元には戻らない場所。
青く澄んだ水のような淋しさと、懐かしさ。
声高に訴えるのではないけれど、胸にしみいる抒情があります。

まさに大人の鑑賞にたえられる作品で、どんな国のひとにも通じる普遍性がある。
純度の高いアートになっています。

アカデミー賞受賞のニュースでもなければ、短編アニメなんてふだん目にする機会がないじゃないですか。
これは観て損なし。観る機会があってよかった!

そして見比べてみれば、アカデミー賞ってあんがい公平なんだなあ、とミョーなところで感心したりして。

絵本にもなっています。
日本では他の加藤監督作品をあわせての上映やDVD発売をしているので、機会があったら、ぜひどうぞ!
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Amazonにはこちらから。
つみきのいえ (pieces of love Vol.1) [DVD]


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by erizo_1 | 2009-03-19 11:39 | エンタメの殿堂