コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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オスカーの本命か? 「インビクタス/負けざる者たち」

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今年もひたひたと近づいてきたオスカー賞狙いのシーズン。

アメリカの映画動向は、夏には子どもを狙ったアクション大作が席巻して、この時期になると、急にオスカー賞狙いの文芸作品が出揃うのだ。

なんたってオスカー狙いですからオオカミ男兄弟のケンカとか、ヴァンパイアとオオカミ男のケンカじゃいかんわけで、人生の苦悩とか不条理とか社会問題とかをあつかった映画でなくちゃならない。

おかげで毎年この時期になると、気持ちがドヨーンと暗くなる映画を見続けるハメになるのだよ!

そして冬になるとやってくるといえば、この男、クリント・イーストウッド御大です。

「アンフォーギブン」で殺伐とした気分にさせられ、「ミスティックリバー」でどん底に叩きこまれ、「ミリオンダラー・ベイビー」でやるせない悲しみにどっぷり、そして「父たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」でヘビーなダブルパンチ。

クリント先生の行くところ屍るいるい

暗鬱なNYの冬をさらに陰々滅々にしてくれるタフガイ、クリント。
ありがとう。

そんな冬男クリントが今年ひっさげて来たのは、
インビクタス/負けざる者たち




モーガン・フリーマンがネルソン・マンデラを演じるという話題作です。

舞台は、1994年ネルソン・マンデラが大統領に就任した南アフリカ。

人種融合の新しい南アをめざすマンデラ(モーガン・フリーマン)は、それまでアパルトヘイトの象徴として黒人層から憎まれていた、南ア代表のラグビーチーム「スプリングボックス」に期待をかける。

そしてキャプテンのフランソワ・ピナール(マット・デイモン)にある言葉を託すのだった。
はたしてフランソワはチームを勝利に導いていけるのか?

なんたってクリント先生の映画だから、勝利の瞬間に悲劇が起こるんじゃないかと変にハラハラして観ていましたが、まったくまともに「感動スポ根」映画なのでした。

実話をベースにしたこの映画、夏休みの学校推薦映画にしていいような感動作品にしあがっています。

中高生にぜひ観ていただきたいと思いマス!
スポーツ部を担当している先生がたやコーチはこの作品をぜひ学生さんたちに見せるべし!
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……しかし。これが、ホントにあの「観客をドツボの淵に突き落とす」クリント先生の作品なの?

まるで「人生の悲哀を唄わせたら右に出る者がいない」といわれていた大物演歌歌手が、いきなり明るい青春ポップスを歌っているような、ふしぎな感じ。

クリント先生、私生活でハッピーなことでもあったんだろうか?

しかも描写がヒジョーにわかりやすいのだ。

映画の文法のなかでは「シャレード」という方法があります。
これは小道具で物語を語るという手法のこと。

「セリフで語るな、説明するな、シーンから観客に感じとらせるべし!」
ということだね。

文学と同じで、映画でも行間というものが非常に大切な役割をはたすもの。
その行間にこそ、味わいや情緒が生まれるからです。

しかし今回のクリント先生は違います。
すべての場面を解説していってくれるのです。

たとえばフランソワがかつてマンデラの収監されていた監獄を見学する場面。

「……と、この時フランソワは心のなかで、こう感じていたのであった」

という説明をちゃんと絵つきで見せてくれるのである!

えー、なんだ、このキャプションみたいにわかりやすい描写は。

そこまで説明してくれなくても大丈夫です、とは思うけれど、子どもにとってはわかりやすいでしょうね。

だから、とっても文部省推薦な教育作品になっているのです。

うーむ(汗)、あのダーティハリーがいきなり好々爺になって「さあ、クッキーをおあがり」と招待してくれても、いつ拳銃を出してぶっぱなすかとドキドキしてしまうエリぞうなのでした。

映画のなかで誰も死なないなんてクリント先生じゃないよ〜!

ま、その意外性はともあれ、とても感動できる作品であるのはたしかです。

国家を再建する思いとスポーツ、人種差別と融合、怒りと許し、困難と希望といったモチーフがみごとに織りこまれていて、既にオスカーの本命視もされているほど。
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見終わったあとに魂の良き部分を鼓舞してくれる映画というのは滅多にないですから、これはすばらしいこと。

いま落ち込んでいるひと、希望が欲しいひと、困難のなかにいるひと、前向きになりたいひとはきっと勇気づけられると思いマス!

モーガン・フリーマンは好演。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるんじゃないでしょうか。

マット・デイモンもよくあそこまで体を鍛えたよね。
ラグビー選手役のひとたちが全員りっぱな体つきで実際にプレーしているのがたいしたもんです。
男の肉弾戦がカッコよし!

この"Invictus" とは英国の詩人、ウィリアム・アーネスト・ヘンリーによる詩で、1875年に出版。

ラテン語で「負けざるもの」「征服されざるもの」という意味らしい。
(出典はwikipedia

作者は12歳の頃に結核菌に冒され、片足を失いながらも、53歳で亡くなるまで詩作や評論を続けたという不屈の精神の持ち主。

このインビクタスも、病に屈服しない彼の精神を表現したものだそう。

この映画のなかでは、マンデラが獄中でこの詩を読んで心の支えにしていたという設定になっています。

獄中のマンデラを支え、ワールドカップで闘うフランソワの心を支えた詩。

運命に打ちひしがれそうになる時や、困難のなかにある時、たったひとつの啓示が自分を支えてくれることもある。

ひとの精神は希望を失わない時にどこまでも強くなれるのだ、ということを教えてくれる映画です。

見終わったあとに、きっと観客の心にはこの詩のことばが残るでしょう。

I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.

わたしはわが運命の支配者だ。
わたしこそが、わが魂のキャプテンなのだ。




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by erizo_1 | 2009-12-15 12:38 | エンタメの殿堂