コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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ヒース・レッジャーの遺作 Dr.パルナサスの鏡

テリー・ギリアム監督作品「Dr.パルナサスの鏡」(The Imaginarium of Doctor Parnassus)の巻です。
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ヒース・レッジャーの遺作となって公開前から話題を呼んだという、いわくつきのこの映画。

テリー・ギリアム節が炸裂するファンタジー作品です。

旅芸人の一座をひきいるパルナサス博士(クリストファー・プラマー)は、鏡をぬけると観客のイマジネーションの世界が広がる、ふしぎな術をあやつって暮らしています。
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じつは博士は不死の命を手に入れていて、千歳にもなる人物。

しかし悪魔(トム・ウエイツ)との賭けに負ければ、自分の娘(リリー・コール)を16歳の誕生日に悪魔に引き渡さねばならなくなることに。

ある日一座は見知らぬ男トニー(ヒース・レッジャー)を助けて、トニーは一座に加わるのでした。
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そして博士は娘を救うために、悪魔を出しぬこうとするのだが……。

肝の部分は、パルナサス博士の行うふしぎな「鏡」芸。
鏡をぬけると、その人の想像力によってイマジネーションの世界が広がるという趣向です。

このイマジネーションの部分はすばらしい!

この部分だけ3Dで観たいくらい!
ここだけビデオにでもしてくれないかなー。

でもってパルナサス博士が率いる旅芸人の舞台が魅力的。
17世紀くらいの古色蒼然とした作りがいいんですよ!

老人と美少女、小人といった芸人一座にマストハブなキャラを配して、ちょっとフェリーニの映画「カサノバ」を彷彿とさせます。

物語のほうは、まあ、付け足しのようなものですね。
べつに人生に対する理解が深まるといった類のストーリーではないです。

そして話題は、主演のヒース・レッジャーが撮影半ばで亡くなっているために、友人だったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの三人が代役を務めてフィルムを完成させたというところ。

はたして三人の出演シーンやいかに?
興味しんしんで観ていると、じつに自然に組み込まれていて、うまく出来上がっていました。
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いや、一本の映画として観たら、はっきりいってミョーなんですよ。
もしヒース・レッジャーの死を知らないひとが観たら、役者がいれかわる必然性が理解できないだろうね。

でも「ヒースの遺志をついで、ジョニデたちが友情出演した」という背景を知っているかぎりは、よくここまで話をつないでいるものだと感心します。

クリストファー・プラマー(あの「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ大佐だぜ!)は、怪しい博士を好演!

でもガンダルフと見分けがつかない(汗)
ダンブルドア校長とも見わけがつかない(汗)

悪魔役のトム・ウエイツも、「ミニ・ミー」ことヴァーン・トロイヤーも良い味出しています。
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そして光っていたのが、リリー・コール!

数年前にドール顔モデルとして一世を風靡したリリー・コール。
最近ランウェイに出ないと思っていたら、女優デビューしていたんですね。

しかも驚いたことに、すごくいいのだ。
役柄にハマっていて、いい!
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じつはスーパーモデルから女優になるのは至難の業だといわれているんですよね。

ミラ・ジョヴォヴィッチとかモニカ・ベルッチみたいに「元モデル」だった女性が映画女優として成功する例は多いけれど、ランウェイで成功していたスパモが映画で成功する例はとても少ないのだ。

実際に多くのスパモたちが映画に挑戦しているものの、ほとんどが玉砕。

ここが役者業のふしぎなところで、モデルとしてはすばらしい存在感があっても、なぜかフィルムになると、ちっとも頭に残らないことが多い。

シンディ・クロフォードも痛い映画に出ていたし、ジゼル・ブンチェンもB級映画に出ていたよね。

出演作が多いアンバー・バレッタやシャローム・ハーロウにしたって、映画ファンにしたら「誰?」って感じじゃなかろうか。

「シン・シティ」のデヴォン青木は印象が強かったけど、セリフがなくて無言だしなあ。

ドール顔モデルといえば、当時大人気だったのが、ジェマ・ワード
ジェマも女優をめざしてモデルは引退したんですよね。

わたしはジェマにインタビューしたことがあったんだけど、その時にはっきりと「女優になる勉強をしている」といっていたもん。

なのに、ジェマの映画ときたら、さっぱり出てこない。
どうしたんだ、ジェマ!

そんな厚い映画界の壁を前にして、鮮やかな存在感を見せてくれたリリー・コール。

リリー・コールの非現実的なルックスがこの映画ではどんぴしゃ!
そして意外なことにちゃんと血肉の通った女の子に見える。

リリー・コールはみごとに女優に転身しましたねー。
すごい!

全体の物語としては、テリー・ギリアムらしく非常にシュールです。

整合性があってきちんと固まった話ではなくて、突発的でどんどん転がっていて、わけがわからないけれど、感覚でわかる物語世界。

ただし「バンデッドQ(タイム・バンディッツ)」のオチの毒気とか「未来世紀ブラジル」のような体制批判はなくて、メッセージ性もないです。

ずばりいえば、むかし懐かしい小劇場のシュールな芝居を観ているような気分になるね。

エリぞう的に絶賛したいのは、この映画のコスチューム

旅芸人の一座であるという設定のため、古着を寄せ集めたレイアードルックになっているんだけど、これがよくできているんですよ。

リリーが着ていると流行のボヘミアン・シックみたいだし、博士が着ているものはなんともいえず珍妙だし、目が奪われます。

コスチュームデザイナーは、モニーク・プルドーメ(Monique Prudhomme)

「Juno(ジュノ)」のコスチュームデザインを手がけているそうです。

インタビュー記事によると、モニークさんはこう語っています。

「このコスチュームのコンセプトを作るにあたって、ガイドにしたのは、テリーとの会話だったわ。

テリーはひとことでいえば、パルナサス博士は不死なんだよって話したのよ。

博士は何世紀にもわたってこの見せ物をやってきて、世界中のものを集めてきている。
だから何世紀にも渡った折衷スタイルであるべきなの。

おまけに博士はキャラバンに住んでいて貧乏だから、現代のロンドンでは時代遅れになっているというわけ。

舞台は16〜17世紀の劇場を発想の源にしているわ」

そしてパルナサス博士の服装には、日本のキモノやインドや中国の生地など、東洋の織物をたくさん使ったそう。

あるルックでは、なんと14枚ものレイヤードをクリストファー・プラマーに着せているとか。

このコスチュームデザインで、モニークさんはBest Costume Design Golden Satellite Awardを受賞したそうです!
ぱちぱちぱち。

エリぞうのようなテリー・ギリアム好き、ファンタジー好きには観て損のない作品。

さらにシルク・ド・ソレイユ好き、シュールレアリズム好き、旅芸人好き、フェリーニ好き、リリー・コール好き、服飾デザインに興味あるひとにもお勧めです。

いっぽう映画にアクションや息もつかせぬ展開、あるいは涙や感動なんかを求める人にはちょっと違うかも。

カラフルで魅惑的なイマジナリーの世界を体験したいひとは、ぜひどうぞ。
日本では2010年1月23日から公開です。






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by erizo_1 | 2009-12-28 11:51 | エンタメの殿堂