コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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少しせつない「かいじゅうたちのいるところ」

ひとの心のなかには、ワイルドシングが生きている。

それは暴れまわる怪獣であり、寂しがりやの大きなけものであり、自分でも飼いならせない生きものだ。

スパイク・ジョーンズ監督の「かいじゅうたちのいるところ」は、そんな心のなかにいるワイルドシングを思い出させてくれる、ちょっぴりせつない映画だ。
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原作はモーリス・センダックの大ベストセラー絵本。

いたずらっこのマックスがお母さんに叱られて部屋に閉じこめられているうちに、怪獣たちのいる島に冒険に出かけるという物語。

原作は英文でわずか380単語
その短い物語をはたしてスパイク・ジョーンズはどのように映像に仕立てたのか。

この物語の主人公マックス少年はいたずら盛り。
けれども絵本とは違って、すでに幼児ではなくて、思春期一歩手前になっている。

両親は離婚していて、お母さんは働いているシングルマザー

お姉さんは自分のカレや友だちと遊ぶばかりで、マックスのことは相手にしてくれない。

そしてお母さんのところを訪れるボーイフレンド
二人が談笑している姿にいらだって、わざと悪さをするマックス。

そして母親に叱られたマックスは家を飛びでてしまい、怪獣たちの住む島に辿り着くのだが……。
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結論からいうと、映画版は絵本のファン層である幼児にはむいていない。
残念ながら、幼稚園児にはむずかしすぎるので、お子さん連れの鑑賞はお勧めしない。

この物語に共感できるのは、思春期から青春期にかけてのヤング・アダルト
そしてかつて思春期だったことを甘酸っぱく思い出す大人ではなかろうか。

映画のほうは、ビルドゥングスロマン(成長物語)に仕上がっていて、繊細な表現力が魅力になっている。

露出オーバーぎみの褪せたような色合いがセンチメンタルで、手持ちカメラのような撮り方が生っぽくて、少年の気持ちをうまく表現している。

ふしぎな島にいる怪獣たちは、自分たちをリードしてくれる王さまを欲しがって、マックスに王さまになってもらうことになる。

つまりここに出てくるのは父親不在の子どもたちなのだ。

寂しがりやのくせに、自分をコントロールできない乱暴な怪獣のキャロル。
みんなを幸せにすることなんかできない無力なマックス。

大人になる過程の悲しみは、世界が思い通りになってくれないことのいらだちだ。
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うんと小さい頃、わたしは世界の中心にいる。
世界には「わたし」しかいない。

ところが成長するにつれて、この世の中には、自分と同じように自我をもつ他者たちがいるのだと気づいていく。

それが大人になる過程であって、たいてい苦痛を伴うものだ。

その淋しさやいらだちや疎外感、不満や怒りを思春期ではうまくコントロールできずに、わたしたちは暴れたり、すねたり、他人を拒絶したりする。

いや、それどころか大人になっても、じつはわたしたちは同じことに悩んだり、怒ったりしているんじゃなかろうか。

好きなひとがふりむいてくれない
自分が評価されない。
友だちが自分より、他の友だちを大切にする。
自分の思うようにさせてくれない。

たったそれだけのことで、ひとは不幸になってしまうのだから。

みんなが幸福である」世界というのは、ファンタジーの島ですらありえない。

この映画にあるマックスは、とことん暴れ回ることで、やがて自分の無力さもわかる。
少しだけ成長して、そして元の家に戻っていく。

みんなが自分の内側に「暴れん坊で寂しがりやの怪獣」を持っているとしたら、わたしたちはどうやって寄りそっていけるのだろう。

その答えをスパイク・ジョーンズは最後のシーンにこめているような気がする。

絵本と同様に、映画でも家に戻ったマックスがスープを食べるところで終わる。
でも少しアレンジしていて、いいカットをつけ加えているのだ。

最後にマックスの顔に浮かぶ、なんともいえず大人びた、やさしい表情。

いったいどんなシーンであるか、それは映画を観たひとへの贈り物として取っておきたい。

「ライ麦畑でつかまえて」を好きなひとだったら、きっと好きになるタイプの映画だろう。

日本では2010年1月15日より公開中。


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by erizo_1 | 2010-01-18 06:24 | エンタメの殿堂