コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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美しくほろ苦い味わいの大人のアニメ「イリュージョニスト」

なんともせつない物語です。
人生のほろ苦さを味わわせてくれる、大人のためのアニメーションが、シルヴァン・ショメ監督作品の「イリュージョニスト
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物語の舞台は1959年。
主人公は老境にさしかかったイリュージョニスト(手品師

時代遅れの手品師である主人公はパリではもはや雇ってくれる店もなくて、イギリスに渡り、さらに都落ちしてはるばるスコットランドの離島に渡り、パブで手品を披露する。
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そんな落ちぶれ手品師のことを、宿屋の女中として働いている少女アリスは、本当にふしぎな力があるのだと信じてしまう。

そして次の町に行く老手品師を追って宿屋を逃げだしてしまうアリス。
エジンバラの場末のホールで働きだす老手品師と、都会に出てきた田舎の娘アリスの運命は……。

この老手品師の少女にかける父親のような愛情、そして田舎の少女がだんだん変化して「」になっていくようす、時代の変化についていけず仕事がなくなっていく老手品師や腹話術師たちといった人生の織りなすがなんともいえず哀愁を帯びていて、せつないんですよ。

そして映像がとにかく美しい
風景の描写がじつにすばらしくて、ロンドンの機関車、ボートで渡っていくスコットランドの小島、エジンバラの街並みを俯瞰で眺めたところ。

柔らかな手描きのタッチを感じさせる絵柄が美しくて、ワンシーンごとが一幅の風景画のよう。

原作は「ぼくの伯父さん」で有名なジャック・タチ監督が生前に書いた脚本で、シルヴァン・ショメ監督が脚色したそう。

このアニメのなかでもジャック・タチの映画フッテージがちらりと出てきますが、この老奇術師の背格好がタチ監督をモデルにしていることがよくわかります。
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もちろんショメ監督が前作の「The Triplets of Belleville」(ベルヴィル・ランデブー)で披露したお得意のデフォルメやコミカルなシーンも満載。

この人物カリカチュアがホントにうまいの!
パリのシャンソン歌手から、ロンドンのオペラ歌手、ロックバンド、スコットランドの酔っぱらいに腹話術師まで、いかにも「いるいる!」と言いたくなる、その特徴の掴み方が抜群なんですよ。

そしてまた少女アリスが「女性」として目覚めていく過程がまたじつにフランス映画的なんだよね(笑)

ジブリの「心正しい少女」ではこうならないだろうな。
そのあたりがヨーロッパ映画的であり、よく女性の本質を見抜いているともいえます(笑)

そしてなによりせつない。
「魔法を使ってなんでもできる」おじさんを信じる素朴な田舎娘と、その少女の幻想を壊したくない老手品師。

父親と娘の関係というものは、こういうものなのかもしれませんね。
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わたしも亡くなった父を思い出して、胸がしめつけられ、瞼が熱くなりました。

ショメ監督は「ベルヴィル・ランデブー」からの大ファンですが、おもしろいことに、前作はおばあちゃんが主役だったのに対して、今回はおじいちゃんが主役なんですよね。

で、興味深いのがこの男女の違い
前回のおばあちゃんは愛する孫のために暗黒街のギャングを相手にまわして大奮闘、三つ子の老歌手おばあちゃんたちもビンボーにめげずに楽しく三人姉妹で暮らしていたのに対して、この映画に出てくる老境にいる男たちはじつにわびしいんですよ。

テレビが娯楽の中心になる時代に、取り残された「古い世代」の男たちはひっそりと消えていくだけ。

どこまでもたくましいおばあちゃんたちと、孤独で哀愁漂うおじいちゃんたちとの相違。
このあたりがさすが鋭い観察眼です。

懐かしさを呼び起こす美しい映像と、ほろ苦くせつないという、まさに大人の味わいのアニメーション。

今年度のアカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされた作品ですが、わたしだったら迷わずこれに賞をあげたい。

美しい映像を観たい方はぜひどうぞ!



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by erizo_1 | 2011-03-07 17:50 | エンタメの殿堂