ニューヨークで日本発、大人のミュージカル「カラー・オブ・ライフ」が上演!
2013年 07月 08日
タイトルは「カラー・オブ・ライフ」
これはNYで行われている演劇祭MITFミッドタウン・インターナショナル・シアター・フェスティバルに日本から初めての作品が選ばれて招聘されたもの。
作/演出の石丸さち子さんは蜷川幸雄さんの演出助手を17間務め、日本を代表する俳優(平幹二朗、唐沢寿明、阿部寛、野村萬斎ほか)と仕事をともにしてキャリアを磨き、2009年Theatre Polyphonicを旗あげした気鋭の演出家です。
今回の上演はオリジナルの新作ミュージカルで登場人物はたった二人。
女性は、女優を目指すニューヨーク在住のハーフ。最愛の恋人を喪ったばかり。
男性は、日本の画家。東日本大震災の後、自分の描くべきものを見喪っている。
そんな二人がふとしたことで出会い、NYでともに暮らし、愛し合い、自分自身をも見つけていくという物語。
やがて時は過ぎ、観光ビザで滞在できる 90 日間は終わろうとして……。
作曲と主演を務める伊藤靖浩さんは27歳で山形出身、15歳から作曲を始めたという若き才人。
わたしは稽古を見学に行ったんですが、これがすばらしいんですよ。
コンテンポラリーで独創性ある楽曲でありながら、とても耳になじむフレーズがある。
たしかにミュージカルの楽曲としかいいようがないのですが、いうなれば歌う詩のような味わいがあるのです。
すごい、こんな曲をサラッと歌ってしまうんだ、と感心。
歌詞の内容も自分のアイデンティティを探ったり、芸術について語ったりするといった文学的なもの。
こちらがその予告編です。
洒落ていますね。
舞台は椅子と机だけで、衣装も白い上下という余計なものをとことん排除したミニマルな設定でいながら、美しい音楽とことばが融合した、大人むけの「音楽劇」となっています。
どこか短編小説を読むような味わいのある舞台です。
今回のNY公演では、日本語の脚本を主演女優のシノ・フランシスさんが英訳して、全編英語での上演。
さてその作/演出家である石丸さんに、今回の作品について訊いてみました。
今日はスペシャル・インタビュー編です!
—まず今回ニューヨークの演劇祭に参加することになったきっかけはなんだったのでしょう?
石丸(以下、石):もともとジェイソン・ロバート・ブラウンの「ラスト5イヤーズ」という二人だけのミュージカルを上演しようとしていたんです。
このミュージカルは作者が離婚の際の記憶を芝居にしたものなんですが、非常にいい台本なんですよ。
ところが上演権が取れなかったんですね。
それで残念な気持ちになって、どうにかああいう舞台をやりたいと思っていた。
そこにNYで演劇祭があるのを知って、作品を書き上げ、作曲家である伊藤くんと組んでミュージカルに仕上げました。
今回はわたしが書いた台本を、バイリンガルである主演女優が英語に翻訳して上演する舞台です。
はたして英語上演で、どれだけ言葉が伝え得るのか、そこが演出家としてはもっとも気にしているところです。
—オリジナルのミュージカルというのは、それほどない分野ですが、なぜあえてそれにこだわったのでしょう。
石:日本ではミュージカルというと、海外のヒット作の輸入物が多いんですね。
また商業ミュージカルはお金がかかりますから、たくさんの上演回数をこなすためには、どの公演も同じになるように均一化しなくてはならない。
そのため役者にとっては自分の個性を生かせないというジレンマもあるんです。
自分にとっても、いま自分の年齢だから作れるものも、あるんじゃないかと思うんですね。
わたしは自分が見たいと思う作品を作るようにしています。
それは必ずどこかに、自分と同じものを見たいひとがいるだろうと思うから。
数はごくわずかかもしれないけれど、きっと劇場のどこかにいると信じています。
このミュージカルは深い喪失を抱えた二人が出会ってつながっていく物語です。
ひとは何かが欠けていたり、飢えていたりすると、必ず他者が欲しくなるものだと思いますが、「他者と出会う」ことについて考えたことがある方なら、きっとなにかを感じてもらえるのではないかと。
ふつうのミュージカルであればクライマックスに持ってくるような楽曲を、あえて冒頭にぶつけてくる作りにしています。
また芝居では必ずきれいだとか、カッコいいと思えるシーンを入れこむようにしていますね。
自分自身としても英語上演でどう受けいれられるか見てみたいところです。
石丸さん本人もかつてNINAGAWAマクベスの上演で、ブルックリンにあるBAMの舞台に役者として立ったことがあるというキャリアの持ち主。
彼女が身近で見てきた「世界の蜷川」や、一流の俳優たちについて尋ねてみたインタビューは後半へ!
Color of Life
カラー・オブ・ライフ
【期日】 7月16日(火) 20:00 7月19日(金) 21:45 7 月 20 日(土) 8:30 7 月 21 日(日) 19:00(各回とも、開演の 15 分前に開場)
【会場】
Abingdon Arts Complex 1st floor Dorothy Strelsin Theatre
住所: 312 W. 36th Street, 1st floor, NYC
【公演サイト】
Theater Polyphonic
【料金】
一般 $18.00 シニア・学生 $15.00
【チケット申込】
Ovationtix