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コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


by erizo_1
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破天荒なアーティスト篠原有司男夫妻の映画「キューティ・アンド・ザ・ボクサー」がべらぼうにおもしろい!

NYとロスで上映されているドキュメンタリー映画「CUTIE AND THE BOXER」を観たんですが、これがすさまじくおもしろいんですよ!
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篠原有司男さんご夫妻のドキュメンタリーなんですが、篠原有司男さんといえば「ギューちゃん」の愛称で知られるアバンギャルド・アーティスト。
60年代には赤瀬川源平さんらとのネオ・ダダ活動で知られ、1969年に渡米。

元祖モヒカン刈り、ボクシング・ペインティング、元祖段ボールアートと、話題にこと欠かない伝説のアーティストです。
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で、このギューちゃんと40年来の奥さまであり、自身もアーティストである乃り子さんを描いたドキュメンタリーがこの映画。

ふつうアーティストの映画といったらアートに終始すると思うでしょ? 
ところが予想を裏切って、この映画のおもしろさは、型破りな夫婦の在り方が描かれているところ。

今月の家賃が払えないとか、家賃払うために作品を持って行商に行くとか、生々しい話が出てきて、なにより乃り子さんの言葉が鋭くてシビれるのです。

映画のなかでは、乃り子さんの名セリフがビシビシ。

「あなたはわたしを無料で使えるシェフで、秘書だと思っているんでしょ。
お金があったら、秘書を雇うわよね。
でもお金がないから、わたしと一緒にいるのよね」

ぐっさー!
人生の真実を突きすぎるセリフ満載で、映画を観ていると、首振り人形になって、奥さまの鋭いセリフにうなずいてしまいます。

これはもうみんな観るといいよ!
誰もがどこかで共感できるから。

「夫婦というのはふたつのまったく違う花をひとつの鉢に植えたようなもの」という乃り子さんの名セリフもすばらしい。
「だから天国もあるし地獄もある」
ですね〜、ですね〜! まさにその通り。

前衛アートとか興味ないし、という人でも、その夫婦の生きざま、男と女の違いについては「ある、ある」と同意ボタンを百回くらい押したくなるはず。

生活能力や責任感や社会的常識から逸脱したアーティストの夫と、なにはともあれ子どもを育て生活しなくてならない妻。

それでも子育てが終わったところで妻は自身のアーティストとしての活動を開花していくわけです。

さらにすごいのは、乃り子さんの作品である「Cutie and the Bullie」がご自分と有司男さんをモデルにしていること。

日本語でいえば「かわいこちゃんと、いじめっ子
ブリーとは英語で「いじめっこ」であり、ブル(牡牛)という有司男さんの名前にひっかけているわけですが、結婚して40年たった夫婦で、自分のクリエイションの中心に夫が出てくるというケースは稀なんじゃないでしょうか。

喜びも悲しみも幾歳月怒りや不満や離婚の危機や生活苦や悲哀をひっくるめて、それでもなおかつそこに流れるというのに、しびれるわけです。
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そして女性は生活することによって夢見がちだったのが急激に現実的になって大人になるのに対して、男性というのはある年齢からまったく変わらずドリーマーというのも、「ある、ある」ボタンに触れるところでしょう。

そしてスタジオを訪ねてインタビューしてみた篠原夫妻はまったく映画そのままでした(笑)

ご夫妻が住むのは今をときめくブルックリンのロフト
いや、このロフトがまたすごいんだって。広大なロフトのほとんどが、もう絵と作品だけで締められているんですよ。
そして雨漏りの水を受けるバケツ。
トイレなんて壁がないんだよ? 

でも屈託なく「この壁のないところでするのがまた開放感があっていいんだよねー!」とトイレにまたがってみせるギュー先生。

「映画ではきれいに描かれすぎていると思うのよ。わたしのきびしすぎるセリフはカットされているから」
とビシビシと鋭い言葉をいう乃り子さん。

「あれだね、乃り子が女王だったら、国民がみんな抹殺されるね」
「違うわよ、私が女王だったら国民みんなの幸せを願って公平にするのよ」

おもしろすぎます。この二人を観ていたら、ドキュメンタリー映画にしたくなるのはよくわかる。
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映画のなかでは「同じことをもういちどやるかといわれたら、やっぱりやるでしょうね」という乃り子さんの名セリフがあるのですが、これがまたジーンと来ます。

そして81歳のギュー先生のエネルギーがすごい。
なんと今ギュー先生がインスピレーションを得ているのは「少年探偵コナン」と「ワンピース」らしいよ! 本棚にはずらりとマンガが!

えーッ、81歳のゲージツ家がワンピースのファン!?
「これがワンピースの○○でさ、こっちが××でさ」と、嬉しそうに前衛的なオブジェを披露して解説してくれるギュー先生。

出来上がりは、どのあたりがワンピースの登場人物なのかは凡人にはまるっきりわからないアバンギャルドな芸術作品なんですが、81歳でワンピースに心酔しているあたりが若すぎます。
ていうか永遠の10歳児?

そして撮影のために「絵を描くポーズをしてもらえませんか?」と頼むと、「いいよー」と気軽に応じてくれるギュー先生。
ローラーを持ち出して、たちまち実際に描き出してくれるのです。

「ここらからこう血が出てね、ブシャーッと!

と擬音までいれながら塗る、塗る、塗る

そのローラーをカンバスに塗るその手つきが、すげえカッコいいの。
迷いのないひと塗り、鮮やかにババッと操るローラーの動き。

なにかもう禅の導師がふるうひと筆、剣の達人の居合抜き、はたまた往年のジョーダンのスラムダンクみたいに、これはこうではならない的な、宇宙の律動にあった美しいなにかなのですね。

ひとことでいえば天衣無縫。蝶のように舞い、蜂のように刺す。
真のアーティストというのはこれか! と感心した次第です。

ゲージツ家といえば苦悩するみたいな印象があるわけですが、じつはゴッホもゴーギャンもベートーベンも天然の子どもだったのかもしれないなー!と思った日でした。周りはたいへんだったでしょうね(汗)
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このインタビューはOPENERSに掲載予定ですので、アップデイトしたら、ぜひご高覧下さいね。

いやー、こんな型破りなご夫婦がいるんですね。
もう大好きにならざるを得ない。愛さざるを得ない。こんなおもしろすぎる方たちを見たことないです。
わたしはすっかり虜になってしまいました。

芸術が好きなひとも、好きなことを仕事にしたいひとも、愛に悩んでいるひとも、夫婦ってなんだろうと迷っているひとも、ぜひ観てみて下さい。

常識を突き抜けた夫婦の在り方は、きっとインスピレーションを与えてくれてくれるでしょう。

日本では12月にシネマライズで公開予定です。

ニューヨークは8月16日サンシャインシネマで封切りされ、初日は監督と篠原ご夫妻も舞台挨拶に出るらしいですよ!
お見逃しなく!

Landmark Sunshine Cinema
143 East Houston Street, New York, NY





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by erizo_1 | 2013-08-16 15:54 | カルチャーの夕べ