コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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主人公で点が高くなる「アポカリプト」

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すっかり乗り遅れた話題ですが、「アポカリプト」

ご存じ飲んだくれオヤジ、いや違った、アカデミー賞受賞のメル・ギブソンの大作です。

はたとエントリを思い出したのは、友だちサリーさんのブログ「NY日記COLORS」に載っていたから。

うわー。サリーさん、すいません、うかつにおれが「おもしろかったよ」なんて勧めたから行ってしまったのですね、失礼しました。

前評判で「残酷描写がきつい」と聞いていたんで、暴力嫌いのわたしも避けていたのですが、勇気をだして劇場へ(大げさ)行った口だったのでした。

なんたってメルギブは前作の「パッション・オブ・クライスト」に不快な思い出があるからなあ。キリストを描いていながら、なんの愛も感動ももたらさず、見終わったあとで「気持ちわるかった」という感想しかない映画ってどうよ?

それに比べたら、「アポカリプト」はテンポのいいアクション映画で、手に汗にぎる展開の連続。
たしかに目をつぶってしまうシーンもあるんですが、小心モノのわたしでもなんとか切り抜けられるレベルでした、はふー。

物語はユカタン半島のジャングルが舞台。狩猟採集の生活をする主人公ジャガー・パウの村が襲われ、なんと村人たちはマヤの首都に連れていかれて生け贄に捧げられることに。
そこから脱出する主人公を追ってくる人間狩りのチーム。次から次へと主人公を襲う苦難。はたして彼は生還できるのか?

というと、メルギブ映画の王道ですね。
主人公の村とマヤの支配者たちの関係が「ブレイブハート」風味、マヤの悪人のみなさんのコスチュームが「マッドマックス サンダードーム」風味、どんなに怪我してもガッツで切り抜ける主人公が「リーサル・ウェポン」風味、激しい血しぶきが「パッション」風味と、まさしくメルギブ節炸裂。

つぎからつぎにとアクションが繰り広げられて、息もつかせません。
おまけに主人公の戦いかたが、なんちゅうかオーガニックというのか、スローフードというのかロハスというのか、そのあたりも見所です。

ところでマヤの人狩り部隊長の息子が、わたしの目には中村獅童に見えるんですが、これはいかん錯覚でしょうか。

この映画から察するに、メルギブというひとは、なんとなく「原始的な父権社会を理想としていて、女のひとはやさしくて、男は強くて、子どもをいっぱい作るのがよい」と考えているんじゃないかなあ、という気がしました。ばりばりの原理主義ともいうね。やっぱりマカとか食って子作りに励んでいるんですかね。

さてこの映画、メキシコでは「人種差別的な内容だ」と抗議の声があがったと報道されていましたが、さもありなん。
「これではマヤ人は残酷なだけの人間で滅んだのが当然だといわんばかりだ」というのが抗議の趣旨のようですが、そりゃまあ、そうでしょう。

だってこれじゃあ、マヤ人たちがみんなマッドマックスの悪人一味みたいだもんさ。

たぶん中南米のみなさんにしたら、日本人が世紀の珍作「ショーガン」(将軍:原作はSHOGUNなんだけど、アメリカ人はショーガンと発音する)を観たときの、なんともいえず困惑した気分に近いんじゃないでしょうか。

あるいは「メモワール・オブ・ゲイシャ」におけるヤリガイみたいな頭をした芸者を見たときの気分とか。
ハラキリ、ゲイシャ、ニンジャだけで日本を語られてもなあ、という。

ちなみに「アポカリプト」の文化背景もかなり「ラスト・サムライ」状態です。

古代マヤ文明を舞台にしてマヤ語を話すという触れ込みなんですが、あれ、古代マヤ文明が栄えていたのって9世紀くらいまでじゃなかったっけ?(公式サイトをたしかめてもそう書いてある)

でもこの映画はあきらかに16世紀を設定しているわけだから、たぶんアステカ帝国のことだと解釈していいんでしょうね?
じゃあ、出てくる皇帝はモンテスマ二世なのか?

なんでもこのモンテスマ役の役者さん、メルギブがメキシコの湾岸ドッグで働いているのをスカウトしたらしいですよ。つまり沖中士さんらしい。
瞳が緑色で、かなり異相のひとですね。

そのアステカ帝国が腐敗しているいっぽう、主人公たちの生活は(都会から徒歩で二日くらいの距離なのに)アマゾンの奥地に住む狩猟採集民族みたいなのよ。

なんだか「ラスト・サムライ」における「明治時代なのに、なぜか戦国時代の暮らしをしている殿」みたいだなあ。

でもまあ、それをいったら「アレキサンダー大王」も「グラディエイター」も成り立たないから、エンタメ映画でヤボはいいっこなしですけどね。

それよりも抗議があがったのは、おそらく冒頭の引用句のせいでしょう。

「どんな偉大な文明も内部からの崩壊なくして、征服されることはない」

これはたしかにある意味で真実だろうけど、この映画の冒頭で引用されると、ヨーロッパの侵略者たちに罪はなくて、インカやアステカの滅亡は自業自得といっているように聞こえなくもない。

いくらアステカの人身御供が残虐にしても、ピサロやコルテスたちヨーロッパの征服者たちに比べたら、殺人数の桁が違うのではなかろうか。植民地にされたほうにしたら、「よくいうよ」でしょう。

しかしながら、それでもプラス要素を探すなら「英語じゃない台本」「有色人種のキャスト」というのは、ハリウッド映画にとっては進歩ではないかと思います。

エンタメというのは非常に枠組みがコンサバなものだから、どうしたって変化には時間がかかりますよね。

それらの問題をおいても、わたしにとってこの映画にかなりポイントが高い理由は、主人公がカッコいいからだあああ!

ルディ・ヤングブラッドくん、えらくカッコいいぞ。
北米ネイティブ・アメリカンの青年ですが、4分のいちくらいブラックの血も入っているようですね。パウワウの踊り手みたいですね。
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主人公の妻を演じている女の子もすごくかわいいです。
はっきりいって出てくる女の子たちがかなり美形揃い。

悪役のみなさんもたいへん立派な体つきのひとばかりですね。フンドシ一丁にさせてオーディションしたんでしょうか。いろんな意味で興味をそそる配役ですね。

というわけで、とりあえず個人的な評価では、「主人公がかっこいいから、よし!」という偏向高得点でした>おい!
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by erizo_1 | 2007-01-11 17:13 | エンタメの殿堂