コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


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古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!

円城塔さん、古川日出男さんらの文学イベントがNYの紀ノ国屋でありました。
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これは翻訳者、柴田元幸さんが責任編集するモンキービジネスの英語版4号の発売を記念したイベント。
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そう、アメリカ小説ファンなら仰ぎみる、あの柴田元幸先生ですよ!
いったいどれだけ柴田先生翻訳の小説を読んできたことか。翻訳者の名前で、これは絶対にいい小説に違いないと思われる翻訳家が何人いることか。

なのに、えらく気さくな雰囲気の柴田先生。退官された東大のフードパーカをお召しになっているところも微笑ましいです(笑)

円城塔さんが自作「フロイド」を朗読します。
耳で聞いていても、おもしろい掌編。まさしく奇想です。
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円城さんは『Self-Reference ENGINE』フィリップKディック特別賞を受賞したんですよね。
これはたいへんな快挙です。

SFとも前衛ともつかない特殊な作風に、参加者から「ご自分ではどういうジャンルだと分類していますか?」と質問が出ると、「スキマ産業でいこうと思っています」と答える円城さん。
その答えは想定外(笑)

このモンキービジネスに参加しているアメリカ人作家としては、マシュー・シャープさんとレアード・ハントさんが出席。

そして古川日出男さんが登場。
わたしアラビアの夜の種族は「アラビアの夜の種族」を読んだときにとてつもなく引きこまれて以来大ファンであり、文学の強い物語性と濃い世界観を好むたちなので、この朗読会を楽しみにしていたのです!

この日は英訳された「ベルカ、吠えないのか」を作家のレアード・ハントさんが読み、原作を古川さんが朗読するという趣向。朗読が始まったとたんに、たいした、たまげた、驚いた。

これを観よ!
演劇レベルぞ!



どこの本多劇場に自分は今いるのだ、と一瞬錯覚したほど。

アメリカでは作家が書店で自作をリーディングするのはよくあることなので、今までにもポール・オースター村上春樹ら巨匠の自作朗読も拝聴したことがあるんですが、こんなの初めて聞きました。

古川さんの経歴を見て納得。舞台演出家や戯曲も書いてきた経歴があるんですね。
そら、ふつうの物書きにできんわ、これは。
なんというか早稲田小劇場

「小説を書くことと朗読することはまったく違う」という古川さん。
朗読する時にはテキストがスコアに見えるんだそうです。そのテキストが持っている美しさを朗読するときには出したいのだと。

ラストには柴田元幸さんが「美しい小説」と絶賛するレアード・ハントさんの「インディアナ、インディアナ」の朗読。

柴田先生が原作を英語で読み、その柴田さんが翻訳した日本版を古川さんが朗読するというゴージャス版です。

再び見よ、古川さんの朗読ギグ!



そして柴田先生の朗読がまたよかった。英語で原作を聞くと、韻の踏み方がじつに美しい。英語の小説は、やはりリズムと韻ですね。

参加者との質疑応答でおもしろかったのが、古典を現代の作家が書き直すという話。
古川さんは宮沢賢治の作品をリミックスしているんですね。

それは現代語訳という意味ではなく、またリメイクでもスピンオフでもなく、ある物語を、現代の作家の肉体と脳を借りてリミックスするという表現であるわけです。

以下は録音したわけではないので正確ではありませんが、古川さんが口にされていた大意はこういうこと。

「物語というのは、つねに作家という乗り物(ヴィークル)を探している。
その作家が替わっても、物語は乗り移ることができる」

小説は生物のようなもの。
生物と同じように、種を滅びさせないためには、クローンのコピーではできない。
遺伝子を混ぜないと、種は続かない」

なるほど、と膝ポンの意見で、非常に刺激された文学談義でした。
考えてみれば、口承文学というのは、まさにヴィークルを乗り移り、何世代にもわたって受け継がれてきたことで、それを「書いた」文学でも挑戦するという方法がおもしろい。

朗読会のあとは、みなさんが本にサインをしてくれました。
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ちゃっかりサインもいただきました。
柴田先生から「エリさま」と書いていただき、嬉しさマックス!
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わたしにしたらジャスティン・ビーバーからサインをもらうファンみたいなものですから(笑)アゲアゲですわー!

毎年一回はモンキービジネスのこうしたイベントがNYであるらしいので、今回見逃した方はぜひ次回を。
日本の方も古川さんファンは朗読ギグがあるとき、ぜひ体験なさってみて下さい。
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by erizo_1 | 2014-05-07 15:13 | カルチャーの夕べ