人生に二度目の飛翔はあるのか? 映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』」が面白い!
2014年 11月 06日
これは面白い! お勧めです!
監督は「アモーレス・ペロス」や「バベル」のレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥア監督。
今作では初のコメディを手がけましたが、これが巧い!
マイケル・キートンが演じる主人公リーガンは、かつて「バードマン」というスーパーヒーロー役で一世を風靡していた役者。
既に終わっちゃっている感のあるリーガンがブロードウェイの芝居に出て、役者として起死回生の舞台を打つという設定です。
それもレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を原本にしたというシリアスなストレートプレイを演じて、演技派の役者として勝負するというもの。
日本でいったら、若い時に特撮ヒーローとして活躍していた役者が、村上春樹の小説をベースにしたシリアスな芝居で、紀伊國屋サザンシアターに立つって感じでしょうか。
ところが話はひと筋縄ではいかず、上演をめぐるゴタゴタや、家族の問題や、共演者とのゴタゴタや、ニューヨークタイムズの批評家との確執や、もう人生はゴタゴタだらけ。
エマ・ストーンが演じる娘のサムからは「パパは終わっているのよ 、フェイスブックも持っていないパパは存在しないも同然なのよ」と罵られ、批評家には自信をへし折られる。
いっぽう彼にはかつてスターだった成功体験があるだけに、自分のオルターエゴは未だに「万能のバードマン」として君臨している。
あっちもこっちも八方塞がりになっているリーガン、はたしてうまく幕があがるのか?
そんなブロードウェイの裏側と、人生の懊悩をコミカルに描いた作品ですが、とにかくすごいのが、そのシネマトグラフィ。
映画がまるまる長回しでワンカットで撮っているように見えて、切り替わりがないのです。
劇場の舞台から楽屋からタイムズスクエアの界隈まですべてがつながっていて、まるで自分もついてまわっているようなのがおもしろく、臨場感ありありです。
しかも和田勉かよ、てくらい、どアップの連続。
長回しのアップのまま、役者同士がテンションの高い芝居を繰り広げるので、まさに演技バトル。
白ブリーフ姿をさらす主役のマイケル・キートンの怪演もすごいし、共演者のマイケル役を演じるエドワード・ノートンが天才肌の役者ながら鼻持ちならない男を演じていて良い味出していて、エマ・ストーンもザック・ガリフィナーキスもナオミ・ワッツも役者陣がいい。
これはきっとオスカーのシネマトグラフィか編集賞をゲットするはず。
セリフも撮り方も編集もインプロビゼーション・ジャズな音楽もカッコいいし、タイポグラフィまでカッコいい。
「イカす」という言葉が死語になって久しいですが、なんというか「イカす」という言葉がぴったりの映画。
えらく洒落ているなあ、というのが鑑賞後の感想。
ダメな中年のカッコ悪い話なのに、えらくカッコいい。
はたして人生半ばからの起死回生はあり得るのか、人生ゴタゴタだらけの中年でも二度目の飛翔はできるのか。
人生の酸いも甘いもわかる大人にこそ観てもらいたい映画です。
日本公開は、2015年春の予定らしいですよ!
付け足し)BIRDMAN or(The Unexpected Virtue of Ignorance)というタイトルを、そのまま直訳すると、「バードマン、あるいは無知による予期せぬ美点」といった意味になります。Virtue は美点、長所、力、効能といった意味なので、その意味を踏まえながら映画を観ると、「なるほど」と腑に落ちるかも。
今回の邦題は巧いタイトルだと思います!