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コラムニスト 黒部エリがニューヨークからお届けします。Blog by Eri Kurobe


by erizo_1
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カテゴリ:カルチャーの夕べ( 69 )

円城塔さん、古川日出男さんらの文学イベントがNYの紀ノ国屋でありました。
古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!_c0050387_14591948.jpg

これは翻訳者、柴田元幸さんが責任編集するモンキービジネスの英語版4号の発売を記念したイベント。
古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!_c0050387_1575919.jpg

そう、アメリカ小説ファンなら仰ぎみる、あの柴田元幸先生ですよ!
いったいどれだけ柴田先生翻訳の小説を読んできたことか。翻訳者の名前で、これは絶対にいい小説に違いないと思われる翻訳家が何人いることか。

なのに、えらく気さくな雰囲気の柴田先生。退官された東大のフードパーカをお召しになっているところも微笑ましいです(笑)

円城塔さんが自作「フロイド」を朗読します。
耳で聞いていても、おもしろい掌編。まさしく奇想です。
古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!_c0050387_150571.jpg

円城さんは『Self-Reference ENGINE』フィリップKディック特別賞を受賞したんですよね。
これはたいへんな快挙です。

SFとも前衛ともつかない特殊な作風に、参加者から「ご自分ではどういうジャンルだと分類していますか?」と質問が出ると、「スキマ産業でいこうと思っています」と答える円城さん。
その答えは想定外(笑)

このモンキービジネスに参加しているアメリカ人作家としては、マシュー・シャープさんとレアード・ハントさんが出席。

そして古川日出男さんが登場。
わたしアラビアの夜の種族は「アラビアの夜の種族」を読んだときにとてつもなく引きこまれて以来大ファンであり、文学の強い物語性と濃い世界観を好むたちなので、この朗読会を楽しみにしていたのです!

この日は英訳された「ベルカ、吠えないのか」を作家のレアード・ハントさんが読み、原作を古川さんが朗読するという趣向。朗読が始まったとたんに、たいした、たまげた、驚いた。

これを観よ!
演劇レベルぞ!



どこの本多劇場に自分は今いるのだ、と一瞬錯覚したほど。

アメリカでは作家が書店で自作をリーディングするのはよくあることなので、今までにもポール・オースター村上春樹ら巨匠の自作朗読も拝聴したことがあるんですが、こんなの初めて聞きました。

古川さんの経歴を見て納得。舞台演出家や戯曲も書いてきた経歴があるんですね。
そら、ふつうの物書きにできんわ、これは。
なんというか早稲田小劇場

「小説を書くことと朗読することはまったく違う」という古川さん。
朗読する時にはテキストがスコアに見えるんだそうです。そのテキストが持っている美しさを朗読するときには出したいのだと。

ラストには柴田元幸さんが「美しい小説」と絶賛するレアード・ハントさんの「インディアナ、インディアナ」の朗読。

柴田先生が原作を英語で読み、その柴田さんが翻訳した日本版を古川さんが朗読するというゴージャス版です。

再び見よ、古川さんの朗読ギグ!



そして柴田先生の朗読がまたよかった。英語で原作を聞くと、韻の踏み方がじつに美しい。英語の小説は、やはりリズムと韻ですね。

参加者との質疑応答でおもしろかったのが、古典を現代の作家が書き直すという話。
古川さんは宮沢賢治の作品をリミックスしているんですね。

それは現代語訳という意味ではなく、またリメイクでもスピンオフでもなく、ある物語を、現代の作家の肉体と脳を借りてリミックスするという表現であるわけです。

以下は録音したわけではないので正確ではありませんが、古川さんが口にされていた大意はこういうこと。

「物語というのは、つねに作家という乗り物(ヴィークル)を探している。
その作家が替わっても、物語は乗り移ることができる」

小説は生物のようなもの。
生物と同じように、種を滅びさせないためには、クローンのコピーではできない。
遺伝子を混ぜないと、種は続かない」

なるほど、と膝ポンの意見で、非常に刺激された文学談義でした。
考えてみれば、口承文学というのは、まさにヴィークルを乗り移り、何世代にもわたって受け継がれてきたことで、それを「書いた」文学でも挑戦するという方法がおもしろい。

朗読会のあとは、みなさんが本にサインをしてくれました。
古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!_c0050387_1565660.jpg

ちゃっかりサインもいただきました。
柴田先生から「エリさま」と書いていただき、嬉しさマックス!
古川日出男さんの朗読ギグに仰天、柴田元幸先生、円城塔さんによるブックイベント!_c0050387_1572664.jpg

わたしにしたらジャスティン・ビーバーからサインをもらうファンみたいなものですから(笑)アゲアゲですわー!

毎年一回はモンキービジネスのこうしたイベントがNYであるらしいので、今回見逃した方はぜひ次回を。
日本の方も古川さんファンは朗読ギグがあるとき、ぜひ体験なさってみて下さい。
by erizo_1 | 2014-05-07 15:13 | カルチャーの夕べ
81歳のアーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!_c0050387_112361.jpg

じゃじゃーん!
ニューヨーク・ニッチ 更新です!
今回は「81歳の前衛アーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!」をアップしました。
81歳のアーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!_c0050387_2346083.jpg

ドキュメンタリー映画「キューティ&ボクサー」がいよいよ日本公開
この映画、ほんとにおもしろいです!

81歳にしてアーティストのギューちゃんの天衣無縫ぶりと、自身もアーティストである乃り子さんの辛辣なツッコミが、とにかくすごい。
81歳のアーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!_c0050387_1124677.jpg

まさかこんなおもしろいご夫婦とは思わずに観て心の大ヒットになりました。今年観たドキュメンタリーのなかでは、断トツおもしろかったです。
日本では12月21日より公開!
ぜひ詳細はニッチでご覧下さい!
81歳のアーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!_c0050387_11242858.jpg

またOPENERSでもギューちゃん×乃り子夫妻にロングインタビューをしたので、二人にご興味をいただいた方は、ぜひこちらも併せてどうぞ。

OPENERS アーティスト篠原有司男、乃り子夫妻インタビュー

キューティ&ボクサー
12月21日よりシネマライズほか全国ロードショー
81歳のアーティスト篠原有司男と乃り子夫妻を追った映画「キューティ&ボクサー」がおもしろい!_c0050387_23491433.jpg

by erizo_1 | 2013-12-21 11:27 | カルチャーの夕べ
リンダ・ホーグランド監督の「ひろしま 石内都 遺されたものたち」がNYで上映されます。
NYで原爆被害者たちの遺品を撮したドキュメンタリー「ひろしま 遺されたものたち」が上映!_c0050387_1156339.jpg

これ広島の原爆犠牲者の遺品を撮り続ける女性写真家、石内都さんのカナダ・バンクーバーで開かれた写真展に密着したドキュメンタリー。

個展の準備の過程から、原爆で亡くなった人々のさまざまな遺品を収めた写真を目にした来場者たちの姿を追います。
NYで原爆被害者たちの遺品を撮したドキュメンタリー「ひろしま 遺されたものたち」が上映!_c0050387_1156249.jpg
(C) NHK / Things Left Behind,LLC 2012

胸をつかれるのは、その焼けこげた遺品が生々しく、それを着ていたひとたちがその直前まで生活をしていたのだと想起させること。

黒焦げになったかわいらしい襟つきのワンピース、子どもが着ていたスモックに残った血痕、時の止まった腕時計、テイラーメイドの背広、水玉のブラウス、青い目のお人形
NYで原爆被害者たちの遺品を撮したドキュメンタリー「ひろしま 遺されたものたち」が上映!_c0050387_1222626.jpg
(C) NHK / Things Left Behind,LLC 2012

それらは一瞬にして命を奪われ、地獄のような苦痛を味わった人たちが残した、わずかばかりの遺品であり、その日の広島には、背広を着たお父さんや可憐なワンピースを着た少女もいて、日々の営みもあったのだと伝わってくることに、心を揺さぶられます。

美しい写真だからこそ、いっそうむごさが伝わり、物いわぬものたちだからこそ、余計にそこにいた人の無念を代弁をする。

北米ではめったに行われない「広島の被爆」を英語で上映する貴重なプレミア、ぜひご覧になってみて下さい。
NYで原爆被害者たちの遺品を撮したドキュメンタリー「ひろしま 遺されたものたち」が上映!_c0050387_1224568.jpg
(C) NHK / Things Left Behind,LLC 2012

THINGS LEFT BEHIND
director:Linda Hoaglund

日時:11月17日(日曜)11:30 AM,
場所:SVA Theatre
333 West 23rd Street
New York, NY 10011
(212) 924-7771

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by erizo_1 | 2013-11-13 12:07 | カルチャーの夕べ
NYに住むアートコレクター夫妻を追ったドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー 50 x 50』(邦題:ふたりからの贈り物)が全米の多くの都市で公開です!
アートを愛する老夫婦を追った「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」全米公開!_c0050387_1275478.jpg

郵便局員のハーブと、図書館司書のドロシー、夫婦共通の楽しみは現代アートのコレクション。
選ぶ基準はふたつ。
1. 自分たちのお給料で買える値段であること。
2. 1LDKのアパートに収まるサイズであること。

つましい生活の中で半世紀をかけて買い集めた作品は、いつしか20世紀のアート史に名を残す作家の名作ばかりに。

そして彼らはそのコレクションを売ることなくアメリカ国立美術館に寄贈
2008年公開のドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』は、多くの映画祭で受賞をし、二人の生き方に日本でも世界でも多くのひとたちが魅了されました。
アートを愛する老夫婦を追った「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」全米公開!_c0050387_12223864.jpg

それでも増え続けるコレクションを、全米50州の美術館に50作品ずつ寄贈するという過程を描いた続編が、この『ハーブ&ドロシー 50 x 50』

この映画の監督は佐々木芽生(めぐみ)さん。
これまでも数多くの映像作家たちがアプローチしてもハーブとドロシーが応じなかったのを、佐々木監督が撮影できたのは、「他の監督たちは資金集めができたら撮影を開始するといって戻って来なかったけれども、わたしはまず撮り始めたから完成できたんだと思います」といいます。
アートを愛する老夫婦を追った「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」全米公開!_c0050387_12113080.jpg

2作目にあたる『ハーブ&ドロシー 50 x 50』(邦題:ふたりからの贈り物)はクラウド・ファンディングを日米で活用。
なんと日本では、日本最高記録の1400万円を越える資金を集めるという快挙を達成。

わたしも少しファンドしましたが、今までしたことなかった「自分も映画作りに参加する」という経験をし、さらにその映画を観るのも初めて経験しました。

NYではIFCセンターで上映され、佐々木監督とともに、ドロシーさんも登場です。
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今作では寄贈作品を受けとった美術館のキュレーターたちや、展示物を見ながら「この作品のどこがアートなんだろう」ととまどう観客たちや、そしてアーティストらとの交流を中心に、実際のコレクションが多数登場します。

「今回アートに焦点はを当てました」という佐々木監督。

車椅子生活になっていたハーブ氏ですが、それでも「これはこうディスプレイしなくてはならない」といった指示を与える時は非常に明晰で、その時だけは眼光が炯々と光るのです。
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『ハーブ&ドロシー』は日本でも大きな話題を呼びましたが、目利きに対する尊敬というのは日本人の精神風土に脈々と流れているのではないでしょうか。

それこそ千利休から始まって古田織部らの茶人の系譜、あるいは青山二郎や白州正子の人気にも通じるもので、たしかな鑑定眼を持つ人物というのは、多くの日本人にとっては憧れといえる存在。

なにも知らない人が見たら、たんなるゆがんだ茶碗がなぜ価値あるものなのか。
わびさびという美意識には前提として教養が必要ですが、これが映画を観ていると、コンセプチャルアートにも通じるものなのだなあ、と感じます。
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ふつうの人にはゴミにしか見えないものが、なぜアートとして重要なのか。
ずばりと価値を見抜くハーブ氏はまさに炯眼
見る目の天才

アーティストたちがハーブのことをコレクターとは見なさずに、同じ世界に住んでいる仲間と見なしているのも当然のこと。

芸術はアーティストが作り出すものですが、審美眼があるひとなくしてアートは発展しえないのだと、しみじみ納得です。

ハーブとドロシーには財産もなければ、子どももいない。
けれども芸術を愛する心があって、審美眼がある。

お金ではない、豊かな生き方とはなんなのか。
心の豊かさとはなんなのか。
二人の生き方は大きなインスピレーションを与えてくれます。

この映画のラストシーンは胸にずしんと来ます。
アートに捧げてきた二人の絆と愛をぜひ感じてみて下さい。

全米での公開スケジュールや公開ロケーションは、こちらの映画の公式サイトでチェックしてみて下さい。



それから第一作『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』をまだご覧になっていない人はまずこちらからチェック!
アートが好きな人は必見です。

ハーブ&ドロシー [DVD]




そしてNY在住のみなさん、日系人会館で佐々木芽生さんの講演会と交流会があります。

ゼロから実現した映画製作と配給の軌跡:
『ハーブ&ドロシー 』2部作を完成し
世界公開に導いたその努力と情熱とは

講師:映画監督 佐々木芽生さん

監督業というクリエイティブな面だけでなく、多大な資金集めや大勢のスタッフ管理、宣伝・配給という全てをこなすプロデューサー業をも背負いこんで公開に結びつけた佐々木監督。
夢をリアルに実現すること、NYで自立して生きていくこと、その9年に渡る奮闘の軌跡を語っていただきます。

■日 時: 10月16日(水) 受付開始 6:30PM / 講演会開始 7:00PM
■場 所: 日系人会ホール 15 West 44th Street 11階
■参加費:  JAAメンバー $25/ゲスト $30/学生 $20 (軽食付)

-■問合せ・質問: event@bwcjaa.org (自動返信応答あり)


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by erizo_1 | 2013-10-07 12:37 | カルチャーの夕べ
岩手県二戸市から、銘酒「南部美人」と浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の器がニューヨークやって来て、岩手をプロモするイベントがあって出席してきました。
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南部美人の蔵元といえば、東日本大震災後に「花見を自粛しないで下さい」と訴えたYouTubeビデオで大きな話題を呼んだ久慈浩介さんですね。
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今回はアメリカ人むけに英語で日本酒の作りかたのレクチャーがありました。

そして漆のレクチャーも。漆というのは漆の木の表面を掻いてその樹液を集めるわけですが、一本の木から年間たった200CCしか取れないという貴重なものだそうです。

よい漆器は使うほどに艶が出てくるのだとか。
自然と近しい器というのは素敵ですね。
岩手県から南部美人と漆器がニューヨークに!_c0050387_1343447.jpg

二戸市は人口30000人という小さな都市。
そこからニューヨークに打って出るという果敢なスピリッツに拍手です。
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岩手県盛岡出身の琴奏者黒澤有美さんが琴演奏を披露。
黒澤さんの演奏は何度も聴いていますが、この方の現代的な作曲と演奏はすばらしいです。
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震災から不屈の精神で立ち直る東北岩手。
ぜjひ北国の伝統文化を世界にむけて発信して欲しいです!


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by erizo_1 | 2013-08-28 13:54 | カルチャーの夕べ
NYとロスで上映されているドキュメンタリー映画「CUTIE AND THE BOXER」を観たんですが、これがすさまじくおもしろいんですよ!
破天荒なアーティスト篠原有司男夫妻の映画「キューティ・アンド・ザ・ボクサー」がべらぼうにおもしろい!_c0050387_15431899.jpg

篠原有司男さんご夫妻のドキュメンタリーなんですが、篠原有司男さんといえば「ギューちゃん」の愛称で知られるアバンギャルド・アーティスト。
60年代には赤瀬川源平さんらとのネオ・ダダ活動で知られ、1969年に渡米。

元祖モヒカン刈り、ボクシング・ペインティング、元祖段ボールアートと、話題にこと欠かない伝説のアーティストです。
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で、このギューちゃんと40年来の奥さまであり、自身もアーティストである乃り子さんを描いたドキュメンタリーがこの映画。

ふつうアーティストの映画といったらアートに終始すると思うでしょ? 
ところが予想を裏切って、この映画のおもしろさは、型破りな夫婦の在り方が描かれているところ。

今月の家賃が払えないとか、家賃払うために作品を持って行商に行くとか、生々しい話が出てきて、なにより乃り子さんの言葉が鋭くてシビれるのです。

映画のなかでは、乃り子さんの名セリフがビシビシ。

「あなたはわたしを無料で使えるシェフで、秘書だと思っているんでしょ。
お金があったら、秘書を雇うわよね。
でもお金がないから、わたしと一緒にいるのよね」

ぐっさー!
人生の真実を突きすぎるセリフ満載で、映画を観ていると、首振り人形になって、奥さまの鋭いセリフにうなずいてしまいます。

これはもうみんな観るといいよ!
誰もがどこかで共感できるから。

「夫婦というのはふたつのまったく違う花をひとつの鉢に植えたようなもの」という乃り子さんの名セリフもすばらしい。
「だから天国もあるし地獄もある」
ですね〜、ですね〜! まさにその通り。

前衛アートとか興味ないし、という人でも、その夫婦の生きざま、男と女の違いについては「ある、ある」と同意ボタンを百回くらい押したくなるはず。

生活能力や責任感や社会的常識から逸脱したアーティストの夫と、なにはともあれ子どもを育て生活しなくてならない妻。

それでも子育てが終わったところで妻は自身のアーティストとしての活動を開花していくわけです。

さらにすごいのは、乃り子さんの作品である「Cutie and the Bullie」がご自分と有司男さんをモデルにしていること。

日本語でいえば「かわいこちゃんと、いじめっ子
ブリーとは英語で「いじめっこ」であり、ブル(牡牛)という有司男さんの名前にひっかけているわけですが、結婚して40年たった夫婦で、自分のクリエイションの中心に夫が出てくるというケースは稀なんじゃないでしょうか。

喜びも悲しみも幾歳月怒りや不満や離婚の危機や生活苦や悲哀をひっくるめて、それでもなおかつそこに流れるというのに、しびれるわけです。
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そして女性は生活することによって夢見がちだったのが急激に現実的になって大人になるのに対して、男性というのはある年齢からまったく変わらずドリーマーというのも、「ある、ある」ボタンに触れるところでしょう。

そしてスタジオを訪ねてインタビューしてみた篠原夫妻はまったく映画そのままでした(笑)

ご夫妻が住むのは今をときめくブルックリンのロフト
いや、このロフトがまたすごいんだって。広大なロフトのほとんどが、もう絵と作品だけで締められているんですよ。
そして雨漏りの水を受けるバケツ。
トイレなんて壁がないんだよ? 

でも屈託なく「この壁のないところでするのがまた開放感があっていいんだよねー!」とトイレにまたがってみせるギュー先生。

「映画ではきれいに描かれすぎていると思うのよ。わたしのきびしすぎるセリフはカットされているから」
とビシビシと鋭い言葉をいう乃り子さん。

「あれだね、乃り子が女王だったら、国民がみんな抹殺されるね」
「違うわよ、私が女王だったら国民みんなの幸せを願って公平にするのよ」

おもしろすぎます。この二人を観ていたら、ドキュメンタリー映画にしたくなるのはよくわかる。
破天荒なアーティスト篠原有司男夫妻の映画「キューティ・アンド・ザ・ボクサー」がべらぼうにおもしろい!_c0050387_1548353.jpg

映画のなかでは「同じことをもういちどやるかといわれたら、やっぱりやるでしょうね」という乃り子さんの名セリフがあるのですが、これがまたジーンと来ます。

そして81歳のギュー先生のエネルギーがすごい。
なんと今ギュー先生がインスピレーションを得ているのは「少年探偵コナン」と「ワンピース」らしいよ! 本棚にはずらりとマンガが!

えーッ、81歳のゲージツ家がワンピースのファン!?
「これがワンピースの○○でさ、こっちが××でさ」と、嬉しそうに前衛的なオブジェを披露して解説してくれるギュー先生。

出来上がりは、どのあたりがワンピースの登場人物なのかは凡人にはまるっきりわからないアバンギャルドな芸術作品なんですが、81歳でワンピースに心酔しているあたりが若すぎます。
ていうか永遠の10歳児?

そして撮影のために「絵を描くポーズをしてもらえませんか?」と頼むと、「いいよー」と気軽に応じてくれるギュー先生。
ローラーを持ち出して、たちまち実際に描き出してくれるのです。

「ここらからこう血が出てね、ブシャーッと!

と擬音までいれながら塗る、塗る、塗る

そのローラーをカンバスに塗るその手つきが、すげえカッコいいの。
迷いのないひと塗り、鮮やかにババッと操るローラーの動き。

なにかもう禅の導師がふるうひと筆、剣の達人の居合抜き、はたまた往年のジョーダンのスラムダンクみたいに、これはこうではならない的な、宇宙の律動にあった美しいなにかなのですね。

ひとことでいえば天衣無縫。蝶のように舞い、蜂のように刺す。
真のアーティストというのはこれか! と感心した次第です。

ゲージツ家といえば苦悩するみたいな印象があるわけですが、じつはゴッホもゴーギャンもベートーベンも天然の子どもだったのかもしれないなー!と思った日でした。周りはたいへんだったでしょうね(汗)
破天荒なアーティスト篠原有司男夫妻の映画「キューティ・アンド・ザ・ボクサー」がべらぼうにおもしろい!_c0050387_15465846.jpg

このインタビューはOPENERSに掲載予定ですので、アップデイトしたら、ぜひご高覧下さいね。

いやー、こんな型破りなご夫婦がいるんですね。
もう大好きにならざるを得ない。愛さざるを得ない。こんなおもしろすぎる方たちを見たことないです。
わたしはすっかり虜になってしまいました。

芸術が好きなひとも、好きなことを仕事にしたいひとも、愛に悩んでいるひとも、夫婦ってなんだろうと迷っているひとも、ぜひ観てみて下さい。

常識を突き抜けた夫婦の在り方は、きっとインスピレーションを与えてくれてくれるでしょう。

日本では12月にシネマライズで公開予定です。

ニューヨークは8月16日サンシャインシネマで封切りされ、初日は監督と篠原ご夫妻も舞台挨拶に出るらしいですよ!
お見逃しなく!

Landmark Sunshine Cinema
143 East Houston Street, New York, NY





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by erizo_1 | 2013-08-16 15:54 | カルチャーの夕べ
サイモン・マクバニー演出の「春琴」がリンカーンフェスティバルリの参加作品としてNYで上演!
これがすばらしかった!
深津絵里主演「春琴」ニューヨーク上演でスタンディングオベーション!_c0050387_13221691.jpg

サイモン・マクバニーの演出がすごい、まさに鬼才
木の棒だけで日本家屋がみごとに表現されて、ふすまをあける所作から、舞台で演奏される三味線の美しさ、人形浄瑠璃のように「生身でない」「お人形さん」のよう少女時代の春琴を人形であらわした演出、倒錯的なエロティシズムに、陰影を生かしたライトまで、高い美意識につらぬかれて、すみずみまで計算された演出がすばらしい。
深津絵里主演「春琴」ニューヨーク上演でスタンディングオベーション!_c0050387_13234162.jpg

でもって役者さんがうまい!
ベテランの笈田ヨシさんから若手のチョソンハさん、ひとりひとりが巧く、そして深津絵里さんがじつによかった。
これほど高慢でサディスティックで、だからこそ佐助から絶対視される春琴を演じることができた女優はいないのでは。

さらにわたしたちのお気に入りは立石涼子さんという熟年女優さんでした。
まあ、とんでもなく巧い。まるで皿洗っているくらいの自然さで、巧い!

現代と春琴の世界を重ねた構成は好みがわかれるかもしれないけど、とにかく「観てよかった」「観てソンなし」「ぜひ一見の価値あり」のすばらしい舞台。

リンカーンセンターの客席もスタンディングオベーションになって三回のカーテンコールになっていました。
深津絵里主演「春琴」ニューヨーク上演でスタンディングオベーション!_c0050387_13224437.jpg


まさしく舞台の醍醐味を堪能できるステージでした!


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by erizo_1 | 2013-07-13 13:29 | カルチャーの夕べ
NYで行われている演劇祭MITFミッドタウン・インターナショナル・シアター・フェスティバルに日本から初めて参加するミュージカル、「カラー・オブ・ライフ
NYに上陸した気鋭の演出家、「いい役者は感情を肉体にマッピングできるものなんです」_c0050387_1445233.jpg

蜷川カンパニーに17年間在籍して、演出補として蜷川氏のもとで働いてきた石丸さち子さん。
役者としてもNINAGAWAマクベスの舞台で、ブルックリンにある名門劇場BAMに立った経験がある石丸さんに、演劇論について尋ねてみました。
NYに上陸した気鋭の演出家、「いい役者は感情を肉体にマッピングできるものなんです」_c0050387_1451570.png

—蜷川幸雄氏といえば、稽古にきびしいことでも知られていますが、ずばり灰皿を投げつけるという伝説は本当ですか?

石丸(以下:石)「まあ、うそではないですね(笑)私が演出助手になった頃はそれほどもう投げてはいなかったですが。
タバコは禁煙したので灰皿は投げないんですが、でもまあ、靴を投げかけることはあったかな(笑)

でもその気持ちはよくわかるんです。
人生賭けて芝居をやっているのに、そこに本気でやっていない人間がいると、それは投げつけたくなりますよ。
いい役者であれば、投げつけられるなんてことはありませんから。理由なく投げつけられるわけじゃないんですよ」

—石丸さんは平幹二朗さんや、唐沢寿明さん、野村萬斎さんといったと当代一流の俳優陣とも仕事をされてきているわけですが、いい役者というのはなにが違うんでしょう?

石「いい役者は「ポーズ」ボタンが効くんですよ。
稽古というのは、たとえば気持ちがあがっているシーンで役者がセリフを言ったとして、そこでいったん切って、演出上の注意を与えるわけですね。
台本を少しずつ切って演出を進めたり、ダメ出しをしたりしていくわけです。
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その時にいったん気持ちが切れて、また最初からやり出さないとそのテンションまで持っていけないのじゃ、演出家としては困る。

いい役者というのは「一旦停止ボタン」が効くんです。
停止ボタンを解除すれば、まったくその同じ感情の高まりから再現できる。

なぜなら役者は感情を心と躰で記憶して、肉体にマッピングできるから。
マッピングというのは、たとえば昂揚した時の呼吸がどのくらいの短さになっていたか、その時横隔膜はどうなっていたか、その喜びは頭から突き抜けるような喜びなのか、あるいは柔らかく下に溶けていくような喜びなのか。それを肉体で記憶するということです。

演劇というのは「繰りかえす芸術」なんです。
映画はいったん撮れば繰り返しませんが、舞台は何度も繰り返す。

役者がセリフをいう時に、声をまっすぐ相手に渡したのか、コロコロと転がすように渡したのか。それを躰が覚えていて、再現できなければならない。

マッピングできている感情の再現ができるのがプロの役者であって、「今回はちょっと気持ちが入らなかった」みたいにいうのはシロートですね。
その技術を軽視してはいけないと思います」
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—演出家として、蜷川幸雄さんからはなにをもっとも学びましたか?

石「美しいものですね。
私はもともと台本から考えていくタイプだったんですが、こんな風景を見たい、こんな風景で切りとるというビジュアルを教えられました。

そして視線
いつも蜷川さんは「アリの目と鳥の目」の二つが必要だというのだけれど、この視線です。
アリの目というのは近くで見つめること、とことん愛すること、とことん近くで見て役者に入れこむこと。
いっぽう鳥の目というのは俯瞰して見ること。
その二つの視線を同時に持つというのが、舞台をパブリックにするためにはとても大事です」
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—蜷川ステージといえば、スペクタクルな群衆シーンでも有名ですね。

石「これはもうたいへんな作業ですよ。最初に必ず役者全員に自分がどんな役でなにをしているのかを最初にきちんとわからせた上で、次に自由にさせる。

たとえば舞台に50人乗せるのでも、ただ並んでいたら少なく見えてしまう。けれどもデコボコをつけた並べ方によって、ぎっしり見える方法があるんですね。
あるいは全員が同じ方向をむいていたら動きがなくなる、あるいは意図が生まれてしまう。

だから最初に徹底的に自分がなにを演じているのか、役者たちにわからせなくてはならない。
その上で自由にさせることで、動きのあるスペクタクルな群衆シーンが生まれてきます。

ひとを信じないと作品は作れないけれど、むやみにひとを信じ過ぎると、作品がでたらめになる。私はそう思っています」

今回のミュージカルはたった二人の芝居で、ほとんど舞台装置もなく、とことんミニマルに抑えたもの。
それでいて歌の力と言葉の力、そして演出によって、とてつもなく大きく見えるんですね。
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いまを感じさせるオリジナル・ミュージカル。
美しい楽曲と、すばらしい伸びやかな歌声、そして深い歌詞を堪能して下さい!

Color of Life
【期日】
7月16日(火) 20:00
7月19日(金) 21:45

7 月 20 日(土) 8:30
7 月 21 日(日) 19:00(各回とも、開演の 15 分前に開場)

【会場】
Abingdon Arts Complex 1st floor 
Dorothy Strelsin Theatre
住所: 312 W. 36th Street, 1st floor, NYC
【公演サイト】
http://polypho.com/col
【料金】
一般 $18.00 シニア・学生 $15.00
【チケット申込】
https://web.ovationtix.com/trs/cal/27845

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by erizo_1 | 2013-07-09 14:19 | カルチャーの夕べ
ニューヨーク在住の映画監督が、「手取川」で名高い石川県の蔵元を追うドキュメンタリー映画のプロジェクトがスタートします!
「手取川」の蔵元を追ったドキュメンタリー映画がNYでキックスタート!_c0050387_6553675.jpg

Kickstarter Launch Party for a New Documentary: The Birth of Saké
映画製作資金を募るキックスターターキャンペーンが開始!
この映画プロジェクトをサポートしながら、日本酒とオードブルを堪能できるパーティのお知らせです。

日時: 7月9日(火曜)7:30 - 9:30 pm
場所: Old Bowery Station
168 Bowery New York NY 10012

参加料: $60 includes Tedorigawa Sakéand paired Hors d'Oeuvres 
by 2013 Michelin Bib Gourmand award winning Chef Akiko Thurnauer.

チケットの購入はこちらのサイトから
Birth of Sake


■映画について
'The Birth of Saké'は、 石川県白山市で5世代続いている吉田酒造店の、複雑で変化に富んだ日 本酒造りのプロセスを追いつつ、数々の賞を受賞してきた日本酒を造り上げてきた蔵人たちの チームワークと和を描いたドキュメンタリーです。
1870年から続く吉田酒造店は、手造り の伝統を守りながら、高品質の日本酒を生産し続けています。

■ゲスト
山本輝幸氏 吉田酒造店杜氏 酒造り歴52年
吉田泰之氏 吉田酒造店6代目蔵元
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■イベント・ハイライト
手取川の造り手と一緒にお酒を堪能する夜
ーミシュラン・ビブ・グルマン賞を受賞したFamily Recipe NYCのアキコ・タネアーによる手取 川のための、メニューペアリング

ー2分半の映画からのショートビデオを初公開

ージャズ・トリオの演奏
ー手取川の日本酒(大吟醸「いきな女」、「山廃大吟醸」、年間 400本限定の秘蔵酒「万華鏡」)や、Chubo Knivesから日本の伝統工芸職人によるシェフ用包丁、監督エリック・シライによるリミテッド・エディションの大型写真などが当たるラッフルゲーム。

監督のエリック・シライはNYC在住のフィルムメイカーで、数々の有名なドキュメンタリーやテレビ番組の撮影で世界を飛 び回っています。エミー賞を受賞したッアンソニー・ボーデーンの「ノー・リザベーション」のカメラマンとして活躍 し、食べ物をテーマにした彼の短篇映画はNYCのTEDカンファレンスでフューチャーされました。

日本の伝統と蔵元のよさが世界にむかって発信されるドキュメンタリー映画、ぜひ日本酒と日本の食文化ファンはぜひサポートを!
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by erizo_1 | 2013-07-07 07:06 | カルチャーの夕べ
このブログでもご紹介した障害者の方たちを中心にした合唱団「ゆきわりそう」のカーネギーホール第九公演に行ってきました。
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photo:Go Nakamura

わたしにとってはまさに目ウロコの体験でした。

尊敬する友人が3年前からオーガナイズに係わっていることもあり、わたしも少しだけ関与させていただいたのですが、これが本当にすばらしかった。

障害者の方が歌う第九といったら、うがった言い方をすれば「かわいそうな人たち」が出る公演だから「お涙頂戴」的な流れと捉えられなくもない。

ところがびっくり、そんな甘いものじゃなかったのです。
実際にカーネギーホールで聞いてみたら、鳥肌が立つほどすばらしかったんですよ。

なんと当日はカーネギーホールが埋まるほどの満員御礼
人生における歓喜の瞬間とはー「ゆきわりそう」第九コンサートで体験したこと_c0050387_15204055.jpg
photo:Go Nakamura

舞台に出たのは日本から来た障害者の方たち、そして一緒に合唱に取り組んできた方たち、さらにNYの混声合唱団。
これにプロとして活躍しているソリストのオペラ歌手たちが壇上に立っていました。

一般的にいえばプロのオペラ歌手の方たちと、アマチュアの合唱団の組み合わせでは、ちぐはぐになりやすいものですが、この公演ではうまくブレンドされていました。
おそらく全体をまとめあげた指揮者の腕も大きいのでしょう。

美しい歌声を聴かせてくれたソプラノ歌手の田村麻子さん。
人生における歓喜の瞬間とはー「ゆきわりそう」第九コンサートで体験したこと_c0050387_1521475.jpg
photo:Go Nakamura

麻子さんの横にある車椅子に載ったお人形さんたちは、ハッピードールといって、布の人形に目鼻をかけるようになっていて、世界の子供たちが作って交換できるというプログラムなのです。

今回の公演でも重度の障害で渡米できないひとたちや父兄の手によって作られたハッピードールが本人に替わってカーネギーホールの舞台に立ちました。

わたしはたまたま公演に先立って身障者である和馬くんとお母さんに会う機会があり、テレビのインタビューに答えているお二人を拝見したんですよ。
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その時テレビのレポーターに答えているお母さまの話を聞きながら、車椅子の和馬くんが「ぷふッ」と笑ったのが印象的でした。

いわゆる照れ笑いだったんですね。
「なんだよ、そんなこといっちゃって。おふくろ、照れるじゃんか」
みたいな笑い方だったんですが、その時に障害を持っている方に対して自分が持っている漠然とした偏見にも気づいたのです。

それは障害を持っている方たちはマジメなはずだ、いつも深刻に悩みながら生きているはずだという先入観であったわけです。

ああ、彼だってふつうの青年で、お母さんの言葉に照れ笑いなんてしちゃうんだよな、という当たり前のことが当たり前のこととして胸に落ちてくる。

彼らと実際に接してみて感じたのは、いかに自分が障害者の方たちや福祉に対して先入観を持っているかという目ウロコ体験でした。

障害を持った方たちが第九を歌うという試みだけですごいし、障害の重い車椅子に座った方たちにとっては飛行機に乗るのも舞台に長時間いるだけでもかなりつらいと思うのです。
それでも彼らはアメリカまで来て第九を歌うわけです。

わたし自身は正直いえば、なぜ? なぜそこまでするの? という疑問もなくはなかった。
でも音楽jの力とはすごいのだな、と改めても思い知らされたのです。

車椅子に座ったままの団員もいれば、立って歌っていた団員もいたし、ヌイグルミを胸に抱きしめて歌っていた団員もいれば、互いの手を握りしめあって舞台に立っていた団員もいた。
その全員がひとつになって歌っていたのです。

そしてまた手話隊の人たちがすばらしかった。
手話っていうか、もう演劇パフォーマンスの域ですね。
人生における歓喜の瞬間とはー「ゆきわりそう」第九コンサートで体験したこと_c0050387_15325649.jpg
photo:Go Nakamura

公演のあとはスタンディングオベーションで、多くの観客の方が総立ち。
そして車椅子の方たちに握手をしていくのですね。

今回の公演ではアメリカ人障害者の方もたくさん来場していましたが、彼らの顔が喜びで輝いていたのも印象的でした。

そして終わったあとに楽屋に戻ってきた障害者の方たちに、よかったよ、すごかったよ、と声をかけた時に、彼らが笑っていた笑顔のピュアさが印象的でした。
ありのままでいえば、うまく喋れないひともいる。口がうまく動かなくて涎をたらしているひとだっている。

けれどもなんと人とは美しいものであるか。
どんな境遇であってもひとの掛け値なしの笑顔とは、なんと美しいことであるか。
人生における歓喜の瞬間とはー「ゆきわりそう」第九コンサートで体験したこと_c0050387_15322978.jpg
photo:Go Nakamura

理事長の姥山さんがインタビューされている話を聞きながら、わたしにとって胸に来たのが、つぎの言葉でした。

「人生で本当に嬉しいと思える瞬間が何度あるか。障害者の生活には、なかなか弾けるような喜びの機会がない、そういう瞬間を与えてあげたかった」

幸福の定義はひとによってさまざまであり、なにを幸せと感じるかは、ひとによって違うでしょう。

それでもひとついえるのは、幸福とは他人が定義するものではなく、自分が幸せだと感じる瞬間の積み重ねであり、人間というのはそうした瞬間瞬間を生きる、あるいは瞬間を突きさしていく串のような存在と考えてもいい。

そして喜びを感じられること、幸せだと感じる瞬間があること、歓喜の瞬間があること、それじたいが恩寵のようなものと思えるのです。
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photo:Go Nakamura

ベートーベンが「歓喜の歌」と命名したのは言い得て妙であって、歓喜の瞬間というのは時という糸をつなぐ宝石だと思うのです。

生きることは決して楽ではない。
むしろ困難の連続です。
多くの時間は我慢の連続であり、思い通りにならないことの連続ではないでしょうか。

それでも彼らに教えてもらったのは、歓喜の瞬間の輝きです。

すべての人よ、兄弟になろうと歌う時、わたしたちはその瞬間たしかにひとつであり、あなたとわたしの境界はなく、世界は美しく調和している。
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photo:Go Nakamura

生きるのはつらく苦しみの連続であるのも、世界は不正と不公平と欺瞞と憎悪に満ちているのも事実です。
人類がみな仲良くできるわけがない。

しかしながらまたいっぽう世界は美しく、わたしたちはひとつであり、わたしとあなたは連続したものであり、生命とはなんと美しいことかと感じられる瞬間も真実です。

それは刹那であっても、なにかしら永遠のきらめきではないか、と感じるのです。
その昂揚する歓喜の瞬間を与えてくれた「ゆきわりそう」の障害者の方たちに感謝したい気持ちになりました。
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photo:Go Nakamura

あなたたちはすばらしい。
生きていてくれてありがとう
そしてそこにいてくれてありがとう、と。
by erizo_1 | 2013-06-11 15:45 | カルチャーの夕べ